
【ソフト・パレード】
隠れ家を教えてくれないか
隠れる場所をみつけなきゃならないんだ
この身を隠す場所が
俺にはもう何もできない
あの男が戸口に立っている
−The Soft Parade/ドアーズ ジム・モリソンはスタジオにやって来たと思うと、買い込んできたビールを次々に空けていった。無くなると買いにださせた。
「これで14本やっつけたな。まだまだいけるぞ!今日は新記録樹立だ!」
それを尻目にプロデューサーのポール・ロスチャイルドは紫煙をくゆらせ、思い耽っていた。
<ゴメンな、こんなとこまで連れてきちまって。いや、オマエが俺たちを連れてきたのか。>
戯れは終わり、スリリングなゲームも終わり、本来は「一抜けた!」をするはずだったモリソンをファンは放して、いや、許してくれなかった。
ロスチャイルドはエンジニアのブルース・ボトニックに言った。
「ブルース、テープを回せ。」
「なんだって?」
「ジムの声を録れ。」
ボトニックはロスチャイルドの考えていることを察した。
「なるほどねえ。ところでポール、アンタ、煙草吸い過ぎだぜ。」
「あ?」
「煙草は百害あって一利なしって言ってだな...」
「やかましいわ、くそったれ!ママみたいなこと言うな!」
「ママ?」
「オマエなんか嫌いだ!」
ジャンキーで間違ってカミさんを銃殺しちゃうような気の触れた爺だったのに、何故か「知性の象徴」として語られる作家ウィリアム・バロウズ。
彼は友人のブライアン・ガイシンと共にモロッコの安アパートである作業に取り組んでいた。
それは新聞や書籍、文字が印刷されたものを切り刻んでノートにテキトーに貼り付けるというもので、センテンス毎に組み合わせることをフォールト・イン、言葉単位で組み合わせることをカット・アップと呼んで小説を作り上げた。かの有名な『裸のランチ』である。
この手法で彼は何作か小説を書いており、「言語ウィルス」なる言葉まで作ってしまった。
例えば、非常に人格者的な文章があったとして、それを解体して組み立て直すと書き手の本性が立ち現れたりする、そんな理屈で考えるべき手法なんだろうが、どう考えても狂気の沙汰である。ええ、僕もたまにやりますよ。アッハハー。
ポール・ロスチャイルドが思いついたのは、このカット・アップ、フォールト・インを音楽でやってみよう、厳密に言えばジム・モリソンの声でやってみようということだった。
曲が行き詰まるとロスチャイルドはモリソンが詩や散文を書き付けたノートをめくった。結果、The Soft Paradeの歌詞は支離滅裂な内容になったが、曲に整合性を与えることで均衡を保っていた。
そして、録り置きしていたモリソンの声を幾重にもオーヴァーダビングし、それをクリアな音像にすることに成功した。1969年のサウンドではなかった。
他にもShaman's Bluesやロビー・クリーガーが持ち込んだWishful Sinfulなど、ロスチャイルドの手腕によって出色の出来になった曲が収められている。
また、詩人アルチュール・ランボーの作品と生き様に魅せられていたモリソンの、ランボーへのオマージュ、Wild Childもある。
しかし、既にシングルで発表された曲が約半分を占める本作は好意的に受け取られなかった。
ジム・モリソンはこんなことを語っている。
「ファンは自分たちの幻想をアーティストに投影させて現実のものにする。それと同じように、ファンはアーティストを殺して、その幻想をぶち壊すこともできるんだよ。」
『ソフト・パレード』をなんとか発表し、ジム・モリソンはつかの間のオフで友人とローリング・ストーンズのコンサートを見に行くことにした。移動手段は飛行機だった。
モリソンは友人とウィスキーをやりながら歓談していたが、酔いが回るや騒ぎ出した。モリソンが、ではなく、友人が。
スチュワーデスが駆けつけ口頭で注意するも無駄だった。
「これ以上は飛行に影響をきたしますのでご容赦願いますか?」
「グヒヒヒ、んなこと言ってねえで、ネーチャン、俺のビッグガンが発射するとこ見るけ?」
結局、この友人のおかげで運航を妨げたとし、訴えられてしまうのだった。しかも、乱痴気騒ぎしていた友人ではなくモリソンが。
ツイていないときは道はデコボコだった。最終的にスチュワーデスがモリソンと友人を間違えていたことがわかり無罪放免となったが、マイアミ事件に続いて彼は別件の裁判を抱え込んでしまった。更に追いつめられていった。
ツイていないのはそれだけではなかった。
モリソンが酒に溺れて髭を蓄え、ブクブクと太っているうちに西海岸にニューカマーが訪れた。
元ヤードバーズのジミー・ペイジが結成したレッド・ツェッペリンだった。彼らはイギリス出身だったが、アメリカ西海岸から知名度を上げようという戦略だったようだ。
ツェッペリンの人気は凄まじく、前人未踏の「ビートルズをチャートから叩き落とす」という偉業をやってのけた。
爆音を奏でるギター、ラウドなドラム、そしてジャニス・ジョップリンのような声で歌う優男。奇しくも、その優男ロバート・プラントはヒッピー・ムーブメントに感化された一人で、アイドルはジム・モリソンだった。
そして、ファンはロバート・プラントを新たなセックス・シンボルとして受け入れたのだった。世代交代と共にジム・モリソン、そしてドアーズにも転機が訪れようとしていた。
テーマ:お気に入りミュージシャン - ジャンル:音楽
- 2006/05/10(水) 00:23:49|
- The Doors
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